第41期
友枝健太郎さん
(東京大学大学院 経済学研究科 経済理論専攻 修士課程2年)
2010年8月~2012年8月
私は2010年夏より、村田海外留学奨学会の援助を受け、ハーバード大学経済学部のPh.D.コースに留学しています。それまで海外旅行すら一度しかしたことのなかった私でしたが、世界のトップの大学で学べるという魅力に惹かれ、具体的に留学が自分にどのような良い刺激や変化をもたらすのか、またそれに伴う苦労はどの程度なのかということは深く分からずとも、躊躇なく留学という道を選択しました。そして、これまでの二年半の留学生活を経て、日本では体験しえなかったであろう苦労とそこから生まれた自分の成長が次第にはっきりと見えてきたように思います。
留学以前の私はゲーム理論の一分野であるマッチング理論を専門にしており、その専門知識を身につけたことに満足している節がありました。しかし、ハーバードでの同級生の興味の広さや能力の高さ、教授陣全体の実証・応用分野の盛り上がりや政治・政策などの実践面での活躍に触れるにつれ、「自分の知っている分野に閉じこもるのではなく、常に重要だと思う社会問題に取り組むために研究をしたい」という根本的な思いが強くなりました。同時に一年目の終わりには、コースワークで一度試験に落第してしまい、追試に受からないと退学になるという経験もしました。この期間、試験のことしか考えられず、研究は進みませんでしたが、一分野にこもっていた自分はその殻を破らないといけないという危機感が自分の追求する研究者像を見直す機会を与えることになったのだと思います。
現在三年目ですが、博士論文に向けて労働経済学と行動経済学の実証分析に取り組んでいます。どちらも研究手法などの面で新しいことが多く大変ですが、自信をもって革新的で面白いと言える、そしてそう説得できる研究になるだろうと信じています。
Ph.D.をとって学者になるというのは時間がかかりますし、多くの人が経済的にも精神的にも不安定な時期を経験するものだと思います。そういった期間に、その両面を手厚く、そして温かくサポートしてくださったのは村田海外留学奨学会の皆様でした。この場を借りて心よりお礼申し上げるとともに、数年後に一人前の研究者となって成果を出すことでご恩に報いることができるよう日々精進して参りたいと思います。