第43期
粕谷淳一さん
(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 総合デザイン工学専攻 後期博士課程3年)
2012年6月~2013年3月
2012年6月より2013年3月まで、米国のマサチューセッツ工科大学Biological Engineering学科のProf.Roger D.Kamm研究室に博士研究員として滞在しました。留学先では、再生医療分野の一つの組織工学の最大の課題である「如何にして血管をもった機能的な生体組織を試験管内で再生させるか」という研究に、マイクロ流体デバイスを用いたバイオメカニクスという新たな切り口で取り組みました。
留学先のラボでは、再生医療や新規のがん治療法の実現にむけた医学・生物学上の課題に対して、材料工学や化学工学、流体力学、機械工学やコンピュータ科学などの様々な分野の手法を複合的に組み合わせてアプローチするという極めて学際的な研究が行われています。それに携わる研究者のバックグラウンドも先に述べた分野を含めさまざまです。議論の場ではそれぞれの専門性に基づいた鋭い質疑が交わされるため、その度に新しい研究の切り口を発見することができ、非常に刺激的かつ有意義な体験となりました。
また、ラボ仲間は、学問上のバックグラウンドだけでなく、人種や国籍、宗教も非常にバラエティに富んでいます。そのため、毎週一回、夜に全員が参加して開かれるラボミーティングでサーブされるピザ(いかにもアメリカらしい)も、宗教上の理由で食事に制限のある人でも楽しめるようにさまざまな種類のものがテーブルに並んでいました。そのような多種多様なバックグラウンドをもった仲間と公私ともに交流を深めることができたことは、留学生活をより一層豊かなものにしてくれたと思っています。なかでも、夏にボストンの郊外で開かれるボストン交響楽団の野外コンサートを聴きに行き、ボスの別荘で夜まで語り合ったのは良い想い出です。世界中から研究者が集まるMITのような研究機関への留学でしか得ることのできない貴重な経験かと思います。
村田海外留学奨学会よりご支援をいただいたことで、留学中の日頃の研究のみならず、学会発表に行くチャンスをいただけるなど、短い期間ながらも研究成果も出すこともできました。さらに留学中は事務局の方にきめ細やかにご対応いただいたことも円滑に留学生活を送る上での大きな支えとなりました。この留学経験をこれからのキャリアに活かすべく益々精進していく所存です。村田海外留学奨学会の多大なるご支援にあらためて感謝申し上げるとともに、これからも村田海外留学奨学会のご支援の下、より多くの日本人の若手研究者が海外留学によって貴重な体験を積み、日本の科学の発展に貢献することを願います。