第53期
井上まりこさん
(大阪大学大学院 基礎工学研究科 博士後期課程)
2022年6月~2023年5月
私は2022年6月からスイスのチューリッヒ工科大学で博士研究員として働いています。博士課程では有機金属錯体を触媒とした有機合成反応の開発に取り組んでいましたが、卒業後は異なる研究分野に挑戦して将来の研究の幅を広げたいと考えていました。そこで電気化学を利用した触媒反応の開発を研究しているMougel教授に連絡を取り、博士研究員として滞在することを快諾していただけたため、本留学が実現しました。
スイスの研究室は博士課程の学生と博士研究員で構成されていることに加え、博士課程から給料が支給されることからも教育機関というよりも研究所という雰囲気があります。また、分野の異なる研究室間での共同研究が盛んで、セミナーの後の歓談などにおける会話で気軽に新しい研究課題が開始されることも印象的です。実際、私の研究で興味深いデータが出た際に教授が「友達にちょうど良い専門家がいるから共同研究しよう!」とおっしゃり、速やかに別の大学の専門家らと共同研究が始まりました。このことから所属先の会合や学会で様々な研究者らと友好な関係を構築することが、将来の研究の可能性を大きくすることが分かりました。まだまだ留学の途中ではありますが、電気化学という新しい分野で主体的に研究を進め、さらに学生の指導をしつつ新しい研究課題を立ち上げることができたことから、研究者として人として大きく成長できたと実感しております。
最後になりますが、この留学を手厚く支援いただいた村田海外留学奨学会の皆様に心より感謝申し上げます。記録的なスイスフラン高を受け資金面で柔軟にご支援いただいたことに加え、事務局の方とのメールによる近況の報告が気持ちの支えとなり、落ち着いて研究に取り組むことができました。また特徴的な取り組みとして世代を超えた奨学生の交流掲示板があり、諸先輩方が大学や民間でご活躍されている様子や同期や後輩の奨学生の方々が留学先で頑張っておられるのを知ることができ、楽しむとともに励まされました。何かと不安定な世界情勢が続きますが、今後も多くの学生や研究者の方が世界へ羽ばたかれることを期待しております。